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海外安全衛生トピックス 中華人民共和国編 第1回

第1回

中国における労働安全衛生行政概要

3. 労働安全衛生関係法規

労働安全衛生に関する主要な法律はPDFファイルが開きます中華人民共和国安全生産法(2002年)[205KB]及びPDFファイルが開きます中華人民共和国職業病防治法(2001年制定2011年改正)[262KB]である。その主要ポイントを説明する[7]。まず、安全衛生管理体制であるが、事業者の中の主要責任者が安全生産及び職業病の予防の責任を担い、具体的な対応組織として、労働者数に拘らず鉱業、建設施工業、危険物[8]の生産・取扱い事業(以下三事業と略称)の場合には安全生産管理組織を設置するか、専任の「安全生産管理人員」を配置する義務がある。その他の業種では労働者数300人超ならば三事業と同様の措置を講じ、300人以下ならば安全生産管理者(兼務でも可能)を配置するか国規定の資格を有する者に安全生産管理を委託する必要がある。労働衛生面では、職業病危害因子[9]を有する事業場では「職業衛生管理人員」(兼務でも可能)を配置し、その内厳重危害因子[10]を有する場合または労働者が100人超の場合は、職業衛生管理組織を設置[11]するとともに専任の職業衛生管理人員を配置する必要がある。また、事業者として安全衛生に必要な資金を投入しなければならず、資金不足によって発生した問題は事業者が責任を負うものとされている。

正陽門
正陽門

「三同時」との用語がある。これは生産施設や設備の新設・増設・改良を行う際には、生産設備等の設計・施工・稼動を単独に行うのでは無く、当該生産過程に関する安全衛生設備・装備も同時に設計・施工・稼動を同時に行わねばならないとの概念、即ち生産設備等を導入するには必ず安全衛生措置を伴わねばならないとの原則をあらわす用語である。三事業の場合や職業病危害因子を有する場合には設備の新増設・改良工事の計画の段階で所轄安全生産監督管理局に届ける必要がある。届出により局の審査を受けると共に竣工報告を行うまたは竣工検査を受ける必要がある。国家発展改革委員会が「産業構造調整指導目録(2011年本)[12] 」を作成・公表しており、産業毎に奨励、制限、淘汰すべき施設・工法・製法などが列挙されており、これとの整合性も審査の過程で考慮される。そもそも三同時の行為に至らない場合でも職業病危害因子を有する場合は、安監局に登録(申告との用語が使われている)することが必要であり、重大危険源[13]も同様に登録する必要がある。また、職業病危害因子の測定・評価を定期的に行い、記録の保管・管轄する安全生産監督管理局への報告・労働者への公表を行う義務、健康診断に関しては、就業時・就業中の一定期間毎・離職時に行い、各人毎の健康保護ファイルを作成し、就業歴の記録と共に管理・保管する義務が課されている。このファイルは退職時に労働者からの要求に応じて写しを作成し証明を付して提供せねばならない。一方、クレーン・ボイラ等の危険性が比較的大きい設備は、特殊設備として分類され、別法令体系[14]によって生産や定期検査が管理されている。

安全衛生管理体制を整えた上で、社内規則や操作規定を制定、施設等の点検、事故時応急対処計画の作成、必要な掲示や労働者教育を行う義務がある。また、機械、有害物質、運転資格などに関して多数の国家標準が定められているところ、国の基準を遵守することが事業者の義務であるとの条文があり、これにより詳細事項を一括して国家標準等に委ねている。

前門商業歩行街
前門商業歩行街

前記の事項は日本の労働安全衛生法令でも類似の規程が見られることから類推してイメージを抱けるものであるが、日本での規程には無いような事項も存在しており、その内のいくつかを次に記す。労働者は、法規に反するような危険・有害な作業を強制された場合、それを拒否する権利があり、労働者が当該権利を行使したゆえに不利益取り扱いをしてもその取扱いは無効となると明文化されている。これは国際労働機関(ILO)の「職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約(第155号)」の規程の趣旨を盛り込んだものと考える。職業病危害因子に係る届出は、社内における検討だけには留まらず「職業衛生サービス機構」による事前審査を受けた上で届出を行うことが求められる。安全衛生管理業務を中間機関に託するとの仕組みもあり、中間機関が企業の安全衛生確保上重要な役割を果たすとの構成になっている。監督管理行政担当部局が事業場に法令履行を迫り改善命令を発する権限を有しているところ、これに従わない場合等に過料を課すことができ、また、当該安監局がその所属する地方行政政府にその権限で事業場そのものを閉鎖するよう要請できることになっている。重大な職業性疾病が発生し社会に深刻な影響を及ぼした場合、当該地域を管轄する地方行政政府の直接の責任者が処分されることがある。また、刑法に規定された罪に該当する場合には刑事処罰の対象となる[15]。更に職業病患者は労災保険の給付を受ける他、民事法に従って損害賠償を要求する権利があると明記されている。

4. 労働安全衛生関連行政機関

中央政府レベルで、労働安全衛生に関する対事業場監督行政は国家安全生産監督管理総局(安監総局)が担当している。労災保険は、人的資源・社会保障部(人社部)が担当しており、職業性疾病の診断は衛生部の所管になっている。地方自治体としては、省、市、市の区・県と階層を成しており、例えば省政府の中に安監局、人社局、衛生局が組織されている。以前は労働衛生に係る対事業場監督管理は衛生部系統の仕事であったが、近年安監系統に移すような方針が示され、2011年末の職業病防治法の改正により確定的に安監系統に移管された。

健康診断に関しては、省の衛生局が承認した医療機関で受診する必要があり、職業病の診断は省が健診機関とは別範疇で承認した医療機関でしか行えない。当該診断機関は、労働者の診断結果に加えて、資料により労働者の職歴職業病危害因子への暴露歴、作業場での因子の状況を把握し総合的に職業病に該当するか否かを判断する。この内雇用関係、職種、職場などに関して争議がある場合、現地労働人事争議仲裁委員会の仲裁を申請できる。診断結果に不服がある当事者は医療機関所在地の地方行政政府衛生部門に鑑定申請することができ、更には省レベルの鑑定委員会に再鑑定申請することができる。職業病の多発傾向に対応して行政の対策が整備されたものと言えよう。



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